【10分でわかるかもしれない】テクノロジーの進化史から見る半導体とは

こんにちは、くりりんです!

データを可視化するにもコンピューターが必要。
そして、コンピューターが行う計算には半導体が重要な役割を果たしています。
といわけで今回は、半導体について書いていきます。

新書「次のテクノロジーで世界はどう変わるのか」を読み進めていると、
今のAIブームに至るまでに様々なテクノロジーの進化の歴史(進化史)が重要であることを理解しました。

その原点となっているのが半導体です。

半導体によるコンピューターの処理速度向上がインターネットの出現と発展を促進し、
世界中の人々がPCやスマホを使い始め、様々なアプリケーションサービスを活用する時代となりました。
その結果、多種多様の巨大なデータが蓄積され、そのデータを活用することができるAIが今の時代に急速な進化を遂げています。

このブログを書き始める前までは、半導体って、電気通したり通さなかったりする物でしょ程度の認識で終わっていた私です笑
コンピューターを触って仕事をしている身として、基幹テクノロジーの原点である半導体とは何かということを知らないのはお恥ずかしい限りです。

多くの半導体を説明する記事では、半導体の性質や経済的な観点から説明されていることがほとんどだと思います。本ブログではテクノロジーの進化史的な観点から半導体を見ていきます。
半導体の歴史ってなかなか面白い!と思っていただけたら嬉しいですb

半導体(セミコンダクター)とは

物質は、電気が通るか通らないかで分類することができます。

  • 導体:電気をよく通す物質
  • 絶縁体:電気を全く通さない物質
  • 半導体:特定の条件下(熱、光、磁場など)で電気を通す物質

と分類されます。

半導体は、特定の条件下を利用することで電気の流れを制御することができます。

この半導体の始まりは、1821年に物理学者トーマス・ゼーベック氏によって「熱電変換効果」が発見されたことから始まります。その効果は、発見者の名にちなんで「ゼーベック効果」と呼ばれています。
ゼーベック効果は、ある物質の両端、または異なる金属同士に温度差を設けることで、その両端の間に電位差が生じる(電流が流れる)という効果です。
この電位差を起電力と呼んでいて、半導体に使われる材料は起電力が大きいものが選択されています。
余談になりますが、センシング界でよく使われる熱電対は、異なる金属同士の温度差から起電力を利用し、電圧から絶対温度を回帰しています。

ゼーベック効果の発見は、物質を温めると電流が流れるということを証明しましたが、半導体の物性(特定の条件下で電気を通す性質)を示すものではありません。
半導体の物性に関して、1939年に物理・化学者マイケル・ファラデー氏が物質を温めると伝導性が増加すること(電流が流れやすくなること)を発見しました。
これが世界で初めて確認された半導体的性質です。

コンピューターは、半導体が電気を通したり通さなかったりすることで、「0」と「1」の2進法を認識することができます。それにより計算処理が可能となります。

多くの半導体の原材料にはシリコンが使われています。
その理由は、、、こちらを御覧ください笑
というのは冗談で、シリコンが原材料によく使われる主な理由は、地球上で2番目に豊富な資源であるため安価に手に入るからです。

半導体の物性が利用されている電子部品は半導体素子と呼ばれ、トランジスタや集積回路など、今日におけるコンピューターに内蔵されています。

半導体産業はいつから始まったのか

1920年代から半導体の実用化に向けた開発が始まったとされています。
第二次世界大戦により、軍事目的にレーダーの受信感度を向上するために鉱石検波器が注目されました。
性能向上に向けた半導体は、シリコンとゲルマニウムに絞られます。
それらの材料を精製する技術(不純物濃度制御に関する技術)が確立され、半導体産業の基盤が固まり始めます。

世界大戦が終戦した1940年代にトランジスタが登場します。
トランジスタとは、電気の流れを制御する装置です。電気信号の増幅や、通電のON/OFFスイッチの働きを担っています。トランジスタによって半導体産業は加速的に発展していきます。

アメリカのTIことテキサス・インスツルメンツ(現在、世界アナログ半導体市場シェアNo.1の企業。)が1952年に半導体ビジネスをはじめ、それを追うように東京通信工業(現在のソニー)も始めます。
エンジニアみんな大好きなAT&Tベル研究所によってトランジスタを内蔵したコンピューターが1954年に開発されます。
1950年代はトランジスタによる半導体産業の発展が成されました。

1959年に、集積回路(IC:インテグレーティッド・サーキット)の仕組みが発明されます。
集積回路とは、トランジスタ、抵抗、コンデンサなどの電子部品を1枚のシリコン半導体基板に実装した回路です。ICチップって聞いたことありますよね。あれです。

集積回路の発明後、その大量生産をフェアチャイルド・セミコンダクター(世界で初めてICを商業生産した半導体メーカー企業。現在は、オン・セミコンダクターにより買収された。)が確立しました。
半導体メーカー企業の多くはカルフォルニア州サンタクララのマウンテンビューに位置していました。
ほとんどの半導体がシリコン由来であったこと、また半導体メーカー企業が位置する辺りが谷(バレー)であったことから、エンジニアみんな大好き現在のシリコンバレーが爆誕(ルギア爆誕的な。私の所属する部署の部長がポケモン映画を見たことがあるか気になるところです。)。
ちなみにシリコンバレーという言葉は、1971年に新聞で記事の題名に書かれていたことから広まったとされています。

1960年代に、半導体産業は集積回路を中心とした時代に移り変わっていきます。
半導体の集積率に関する論文の中でムーアの法則が1965年に発表されます。
提唱者のゴードン・ムーア氏は、当時フェアチャイルドセミコンダクターに所属しており(現在はインテルに所属)、著名な半導体技術者です。

半導体産業は、1970年代に入ると、テレビゲーム機を開発し始めます。
もちろん、当時のゲームはカクカクだったと思います。これがNintendo SwitchやPS4になって高画質でヌルヌル動くテレビゲーム機に進化してしまうのですから驚きですよね笑

1980年代前後に、コンピューターは業務用から家庭用に開発が進みます。
アップルⅡが発売されたのもこの頃ですね。

1970年代から半導体産業の経済は好循環構造となります。
業務用のコンピューターが売れれば売れるほど、半導体の価格が下がり、結果コンピューターの価格も下がります。売れた分の利益を開発費に回し、より速い処理速度を実現する半導体が開発され、さらに性能の良くなったコンピューターの発売は既存ユーザーの継続と新規ユーザーの獲得を達成します。
そのような循環構造が1990年代以降も維持され、今日における高性能の家庭用コンピューターの開発を実現しました。

半導体の集積率の向上

1990年代後半から、半導体のチップ上にどれだけ集積回路を載せることができるのかといった半導体の集積率の向上を目指した開発が進みます。
その開発に重要となってくるのが、メモリプロセッサになります。

メモリとは、パソコンのスペックに記載されているあのメモリです。
コンピューターは、メモリに記録されたデータを使って計算を行っています。
例えば、ブラウザでたくさんのタブを開くとメモリの使用率が増加する経験は誰もがあると思います。それはメモリにブラウザが開いているタブのデータが一時的に保存されているからです。別のタブをすぐに表示できるのは、このメモリがタブのデータを記録していて、自由にそのデータを取り出せるからです。

そのメモリにアクセスすることができるのがプロセッサです。プロセッサは、メモリに記録されたデータを受け取り、制御や演算の役割を担います。

もちろん、メモリとプロセッサには半導体が使用されています。
メモリは半導体の集積回路にデータを記録することから、半導体メモリと呼ばれます。

プロセッサを1つの半導体チップに集めて載せたものをマイクロプロセッサと呼びます。
CPU(中央演算処理装置)なら聞き覚えがあると思いますが、このCPUがマイクロプロセッサのことを指しています。

コンピューターを携帯できるデバイス(今のスマホやラップトップなど)として電池で動かせるようにするために、プロセッサの小型化・高速化・省電力化が進み、マイクロプロセッサの集積数が加速的に高まりました。
その発展には、歪みシリコンハイケーゲート絶縁体3Dトランジスタの登場が大きく寄与しています。

歪みシリコンにより高速化と省電力化、ハイケーゲート絶縁体により小型化と省電力化が促進されました。
上記の2つのテクノロジーは、半導体を効率よく平面に並べたり、半導体の材料を電気容量を決める変数である誘電率の高い物質にすることで、小型化・高速化・省電力化を実現させています。

そして、平面構造で半導体を配置することに限界を迎え、立体構造で半導体を配置する3Dトランジスタの登場により半導体はさらに進化します。
現在、小型化・高速化・省電力化の3つの観点から3Dトランジスタの技術が半導体技術の頂点とされています。

では過去約50年間でどれだけトランジスタが1つのICに搭載されるようになったのかを見てみましょう。

データはWikipediaから引用。横軸に年単位の時間、縦軸に単位ICあたりのトランジスタ数を示しています。単位ICあたりのトランジスタ数が指数関数的に増加していることがこの図から把握できます。

データはWikipediaから引用しております。
ゴードン・ムーア氏は、ICに搭載される半導体素子の数が「2年で2倍」になるという法則を発表しました。
提唱者の名から「ムーアの法則」と呼んでいます。
年単位で倍になるということは、ICに搭載される半導体素子の数が指数関数的に増加するということです。
上図では、縦軸に”単位ICあたりのトランジスタ数”を示しています(すべての半導体素子の数ではないことにご注意ください)。
ICあたりの搭載されたトランジスタ数から見ても、その増加が指数関数的であることがわかると思います。
トランジスタの搭載数の増加率が減衰せずに開発され続けてきたことから、前述で述べた「1970年代から半導体産業の経済は好循環構造」であったことがデータから理解できますね。

クラウドの登場が半導体の開発競争に一旦終止符か

2006年から2008年にかけてGoogle App EngineやAmazon EC2などのクラウド技術が登場します。
そして、クラウド技術が発展するにつれて、デバイスの小型化の需要がなくなっていきました。

それは、データの計算処理をクラウドで行うことで、手元のデバイスの計算処理が高くなくても十分な計算結果を得られるようになると見通されていたからです。
さらに5Gの到来がデータ処理のクラウド化に拍車をかけます。
クラウド上での処理が手元のデバイスで処理したかのように体験できるようになると考えられています。
そういった理由から半導体の開発競争に落ち着きが見られるようになったとされています。

確かに、今日におけるスマホやラップトップはもう十分に速いし薄いし軽いですよね。
小型でハイエンドなコンピュータは既に達成されたと言ってもいいかもしれません。
今後は、手元のデバイスのスペックをよりハイエンドにするのではなく、5G技術を取り入れたクラウドとの連携が重要になってくるのではないでしょうか。

つまり、ハードウェアとソフトウェアの価値のバランスが逆になるということです。
現在は、デバイスのスペックとして、メモリ、CPU、ストレージ容量などのハードウェアに一定の価値があります。
しかし、将来、デバイスのスペックとして求められるのは見た目や使いやすさなどの”箱”としてのデザインだけになり、価値がデバイスにインストールされるソフトウェアに移行すると予測されています。

だからといって、メモリやCPUに使われる半導体の価値が下がるというわけではありません。
クラウドといってもデータを処理するのは実体のあるコンピューターですから、そのコンピューターのメモリやCPUには半導体が必須の存在になります。
そういったコンピュータは持ち運ぶことはないので、半導体を小型化するよりも高速化・省電力化する方の需要が高くなると考えられます。

そのため、半導体は高速化・省電力化といった観点からこれからも開発されつづけるのではないでしょうか。

まとめ

ここまで半導体の進化史に触れていただきありがとうございます。
なぜ、クラウドや5Gのテクノロジーが注目されているのかといったことが理解しやすくなったのではないでしょうか。

これまでの私のそれらのテクノロジーの認識は、クラウドであれば、インターネット上でなんでもできるんでしょ!すごい!
5Gであれば、大きなデータを速く通信することができるんでしょ!すごい!
のようなフワフワした感じでした笑

半導体の進化史を読み進める中で、人類がクラウドや5Gを取り入れることでどのような体験を得ることができるのかといったことを理解する手助けになりました。
テクノロジーの歴史的な経緯を簡単にでも知っておくと、最新のテクノロジーの本質が少し見えてくるかもしれませんね。

余談

半導体に使われているシリコンですが、利用しているのは人間だけじゃないんですよ。
実は植物プランクトンの珪藻が利用しているのです。
珪藻という名からわかるように珪素すなわちシリコンの植物プランクトンということです。

珪藻は海洋でよくブルームと呼ばれる大増殖を起こし、漁業生産に大きく寄与しています(時に赤潮などの災害となってしまうこともありますが)。
光合成で大気に存在する炭素を固定すると同時に海中のシリコンも固定しているのです。
そのため、生物地球化学的な観点から炭素とシリコンの循環に密接に関連していると言えます。

半導体産業の始まりによって、人間の活動がシリコン循環にまで及んできました。
これが悪いこととは言いませんが、これまでの地球上のシリコン循環にどう影響を与えているのかが気になるところです。
珪藻と人間でシリコンの競合が起きてしまったら大変ですよね(資源量的におそらくないとは思いますが、ないとも断言できません)。

今後も人類の発展と半導体産業は切り離せない関係ですので、もしかしたら、近い将来にシリコン循環が注目されるかもしれませんね。

参考文献

  • 山本康正(2020)『次のテクノロジーで世界はどう変わるのか』講談社現代新書
  • 「熱電変換」って何?
  • その1 19世紀 トランジスタ誕生までの電気・電子技術革新
  • その5 20世紀前半 トランジスターの誕生
  • 半導体ってなんだろう
  • 今更聞けない!集積回路(IC)ってどんな仕組みの回路?
  • シリコンバレーの歴史 世界一の起業・投資エコシステムはいかにして育ったのか?
  • 「間違いだらけ」のムーアの法則
  • Intelが発表した「3次元トライゲート・トランジスタ」って何だ? 「Ivy Bridgeの性能を大きく引き上げる技術」の正体に迫る
  • 地球上のケイ素の循環と生物の関わり
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