はじめに
コンピュータでは数値計算を行うと誤差が生じます。(参考: Wikipedia コンピュータの数値表現)
そのため、CADでは微小な誤差の場合は一致しているとみなす範囲を設定しています。
これを「モデリング精度(許容差、許容誤差)」と言います。
例えば「モデリング精度」が0.01に設定されているCADの場合、平面と点の距離が0.01mm以内であれば点は平面上 にあるとみなします。
異なるCAD間でデータを扱う場合
異なるCAD間でデータの受け渡しをする場合、「モデリング精度」が問題になることがあります。
モデリング精度が0.1mmのCADから0.01mmのCADにデータを渡す場合、形状が欠落や変形する原因となります。
例えばモデリング精度が0.1mmで一致していると判定していた端点が、モデリング精度0.01mmでは一致していないと判定される場合があります。
形状認識における誤差
3D CADデータの形状認識を行う場合はCADデータの変換があることが前提になるので「モデリング精度」と「データ変換精度」の誤差を許容するための「許容誤差」を設定しています。
では、この「許容誤差」を使って一致判定を行った場合にどのようなことがあるかを最も簡単な点を使って見ていきます。
3個の点がお互いに許容誤差以内の距離の場合
許容誤差を用いた一致判定で想定している状態です。
3個の点が一致しているとみなせます。
3個の点に許容誤差以内と許容誤差以外の距離がある場合
基準とする点によって許容誤差以内と許容誤差以外に分かれる状態です。
3個の点を一致とみなすか2個の点のみ一致とみなすかは最初に選んだ点によって異なります。
このような場合は点のみの情報と許容誤差では一致判定ができないため、CADデータの面や線の情報も含めて判断しています。
許容誤差で判定した後の課題
一致判定した後には、その後の計算で一致判定した点を扱う場合にどちらの数値を使用するか、平均した数値を使用するかなどの課題があります。
また、CADデータには様々な数値がありベクトルや幾何形状の一致判定のための許容誤差も設定が必要になります。
これらの一致判定の条件は実際のCADデータの数値のばらつきや最終的に求められるパラメータに影響するかなどを測定して複数の条件を設定していることが多いです。
まとめ
今回は単純な一致判定でも「許容誤差」だけでは解決できない場合を紹介しました。
3D CADデータはCADデータ変換が間に入ると想定していないケースの問題が数多く出てきます。
次回はもう少し複雑な場合について考えてみたいと思います。