はじめに
製造工程で3DCADデータを使用する場合、同じ3DCADであれば設計した際の情報を参照できます。
ですが、組織や企業が異なり他の3DCADで読み込むためにデータを変換した場合、形状以外の情報(履歴、部位情報など)が渡ってこないことが多くあります。
そのような場合に形状情報から製品を推定し、設計者の意図を復元するのが形状認識です。
近年では機械学習による形状認識もありますが、ここでは幾何形状からの形状認識の基礎部分を紹介していきます。
Primitive(プリミティブ)認識
一般的な3DCADでは形状はGeometry(幾何情報)を持ったFace(面)などの集合として表現されます。
3DCADではCylinder(円柱)やSphere(球)などのGeometryが同じでも複数のFaceに分割されている場合があります。
その後の処理で扱いやすいように幾何情報で部位を認識することをPrimitive認識と呼んでいます。
この図の形状では円筒(Cylinder Boss)のPrimitiveが2つ認識されています。
Semantic(セマンティック)認識
同じ形状でも位置や大きさによって設計上の意味が異なります。
Primitiveを用いて製品の意味的な部位を認識することをSemantic認識と呼んでいます。
同じ円筒形状でも大きさや位置によって機能的な役割が異なるのでHead、Shankという別のSemanticFeatureとして認識しています。
Semantic Featureの組み合わせから、このモデルは金型のピン製品や、位置決めピンのようなものとして認識できます。
形状認識後の用途
形状認識の技術により、これまで人でに頼っていた以下のような業務も、工程の自動化や省力化が可能になります。
- 商品種類の判定
- 価格、納期見積りのためのパラメータ抽出
- 2D図面の生成
- 加工可否の判定
まとめ
以上が3DCADデータの形状認識の基本的な流れですが、実際にはCADの誤差、CADデータ変換の誤差、製品に求められる精度などを考慮して形状認識処理を作成しています。
旧約聖書に登場するバベルの塔以前の世界のように、CADの世界も統一された言語が使われるようになれば、3DCADデータの形状認識をする必要もなくなると思います。しかし現在もさまざまな言語が使用されているのを思うと、それはまだ当分先の話になりそうです。