秘書問題×心証=ベターな人材
こんにちは!
採用担当の池田です。
この前、
勉強が大好き
という新卒の学生の方と面接をしたのですが、その際に合否判断に苦しんだ経験をお伝えさせて下さい。
勉強が大嫌いという方はいつの時代も多いですが、一定以上の学歴の方は勉強が好きな方も相当数いる印象です。
私自身は、もしこの質問をされたら、
嫌いではない
と答えると思いますが、その理由は至ってシンプル。
成長している“気がする”から
知らないことを知ることは確かに素晴らしいことですし、それ自体は何ら否定するものではありません。
私自身も小学校の夏休みの宿題を、涼しい部屋で黙々と取り組んでいた時って、何だか充実感があった記憶があります。
ただ、勉強が好きという言葉だけを聞いてしまうと、客観的に勘違いされるケースがあるのもまた事実。
いわゆるプロセス指向ではないかと。
勉強って、ある意味努力に比例しやすい領域ですし、誰にも邪魔されないからこそスムーズに進みやすいと思いますが、面接という場においては、仕事でしっかり成果を出せるか否かを見られるわけです。
そうなると、成果を出すための手段として、勉強するのであれば分かりやすいですが、勉強そのものが目的になっていると、どうしても疑ってしまうんですよね。
実際の仕事は、勉強よりもよっぽど複雑で様々な能力が求められるけど、その辺り理解しているかな?
という感じです。
このような背景があるからこそ、新卒の面接では大学の勉強や研究よりも、課外活動(アルバイトやサークル等)の方が評価されやすいのだと思います。
まぁ課外活動はウソも存分に盛り込めてしまうので、どちらが良いのかは中々断言しにくいですけどね(笑)
勉強そのものが決して悪いわけでは無いですが、いわゆる“お勉強好き”な人と勘違いされないような伝え方を準備する必要があるので、今後面接を控えている方はぜひ参考にして頂ければと思います。
さて、今回は面接にまつわる話をさせて頂きます。
秘書問題をご存知ですか
このブログで何度も何度も伝えていることですが、面接で候補者の方を見抜くことは出来ません。
明らかにNGな人を弾くことは出来ますが、成果を出せる人物なのか、社風にマッチする人物なのかは、やはり一緒に仕事をしない限りは難しいと思っています。
ただ、もし面接という手段を使って合理的に候補者を判断できるとしたら面白いと思いませんか。
実は数学の世界では、既にそれが実証されており、
秘書問題(最適停止問題)
と言われています。
詳細について簡単に紹介しましょう。
秘書の求人に応募してきた人を面接する立場になったと想定します。
以下のルールのもとで、最も優秀な秘書を採用するには、どのタイミングで選ぶべきでしょうか?
- 秘書の求人枠1名に、100名応募があった
- 面接官は1人ずつランダムな順番で面接する
- 面接官はいつでも好きな人を採用しても良い
- 選んだ応募書は辞退できず、1人選んだ時点で選考は終了する
- 一度不採用とした応募者を後から採用することはできない
もし皆さんがこの問題に対応するとした場合、どうしますか???
- 最初の1人目でOKするのはさすがに早いから、もうちょっと多く面接して比較したい
- 100人目が全然ダメな人だと嫌だから、100人は面接しないだろう
- 半数の50人程度面接して大まかな基準を作るのが良いのかな
等々、感覚的に思うことは多々あると思いますが、実はこれは数学的に最適な人数が証明されているんです。
答えは、37人
簡単な解説は下記参照頂ければと思いますが、詳細な証明はぜひググって頂ければと思います。
k 人目まで無条件で断り,k+1 人目以降で「今までで一番いい人」が現れたら交際する,というタイプの戦略(戦略 Sk と呼ぶ)を取ることにします。直感的に自然な戦略です。 k をどのように定めればよいかを考えます。
n が十分大きいとき, k=n/e (の近く)が最適。このとき,n 人の中で一番タイプな人と交際できる確率は約 37 %。
※ネイピア数 e=2.718⋯
初めて聞いた方もいるのかもしれませんが、私もこの仕事をする中で知ったことでした。
で、秘書問題を通じて何を伝えたいのかと言うと、
ベストな人材を選ぶのは難しいが、ベターであれば可能
ということ。
現実的な話をすると、1名の方を採用するために37名をある意味実験台にして、それ以降良かった方を採用するなんてことはしません。
そんな呑気なことが出来るのは、人に困っていない超人気企業だけでしょう。
ベストな人材をひたすら待って採用できるのであれば可能な限り待ちますが、実際には入社してほしい時期が企業側にはあるのでどうしても期日があるわけです。
それまでにベストな人材を採用すべく走り回るのは当たり前ですが、とは言え運や縁、タイミングも関わってくることなので、実際の採用現場では、
よりベターな人を採用する
という方針が取られているのもまた事実。
決して妥協しているわけでは無いですし、重要ポジション(経営幹部等)の採用はよりベストな人材獲得のために動く傾向はありますが、多くのポジションの場合はベターな採用で動かざるを得ません。
ある意味、面接の限界と言うべきところでしょうか。
そのため、面接で不合格連絡を貰うたびに、
あんな面接官に、俺の何が分かるんだ!
と怒る気持ちは重々分かるものの、そこまで深い理由で不合格にしているわけではないので、気持ちを切り替えて頑張りましょう。
心証が重要
毎日のように面接官をさせて頂いている私ですが、回数を重ねるたびに合否判断の難しさを痛感しています。
明らかにNGな人は分かります。ただそんなのは誰でも判断出来るわけですよ。
それこそ、
- 身なりがしっかりしていない
- 挨拶が全く出来ない
- 言葉遣いが社会人としてふさわしくない
- 明らかな嘘をつく
等々、要は社会人として最低限のマナー・スキルを持ち合わせていない方がそれに該当します。
ちなみに、ITエンジニアの方は身なりの部分で損している方は一定数存在している印象です。弊社は私服でもOKですが、とは言え面接という場においてヨレヨレのシャツにめちゃくちゃ汚れているスニーカーで来られてしまうと、どうしても印象は良くないわけです。
その方のスキルがいくら高くても、
お客様に不快な印象を与えないかな
と心配してしまいますし、表面に出ている部分が雑だと、仕事も雑ではないかと勘ぐってしまうので、おしゃれである必要はないですが、清潔感のある服装は心掛けてほしいと思っています。
ただ、身なりで引っかかる方はそれなりにいる一方、それ以外の部分で該当する方はほとんどいない(上記のような方は書類時点でそれが現れていたり、エージェント側のスクリーニングでそもそも企業側に推薦されない)のもまた事実なので、毎度悩みに悩んで判断するわけです。
その中で私が最も重要視していることは、
心証
なのですが、要は感覚です。
自分が面接を通じて感じた、感覚を何よりも重要視しているんです。
これを聞くと、
ふざけんな!キャリアを左右する面接において、お前の感覚だけで決めんじゃねー
と怒り心頭な方もいることでしょう。
ただ、この判断軸は日本の裁判制度においても非常に重要視されていることで、裁判官が判決を決める際にも心証を基準にしているそうです。
裁判員制度で、民間の方に裁判員として刑事事件に参加してもらうのもこのためですよね。
要は、ごく普通の感覚を持った民間人が裁判に参加することで、「普通の感覚ではどう思うのか」という判断軸が重要視されているということ。
面接なんかよりもよっぽど人生を左右する裁判において重要視されているやり方なので、少しは怒りは収まりましたでしょうか(笑)
さらに現実的な話をすると、不採用理由については明確に言語化出来ないことが多いんですよね。
エージェント経由の場合は不採用理由もしっかりエージェントに伝えないといけないので、不採用理由を敢えて言語化するようにしていますが、誰が見ても納得感のある内容を毎回伝えることが出来ているかといえばNO。
それこそ、
- 魅力的な人かどうか
- 一緒に働きたいと思うかどうか
- この人についていきたいと思うかどうか
等で判断することが多いのですが、上記の要素ってその人が発するオーラや雰囲気という至極抽象的なものに紐づくと思うので、それらを言語化して伝えようと思っても、残念ながら伝わりにくいですよね。
例えばあなたがCMを依頼する企業担当者で、自社のCMに有名女優を1名アサインするとしましょう。
会社の顔となるので、出来れば美人が望ましい。
- 石原さとみさん
- 長澤まさみさん
- 北川景子さん
- 新垣結衣さん
- 綾瀬はるかさん
上記の5名は年齢も近く、主演クラスの方達なので出演料等のレベルや格としてはイコールだと仮定し、もし候補に挙がった時に誰を選ぶか。
これについて広告代理店に勤める知り合いに、どういう基準で企業側が決めているのかと聞いたところ、最終的には企業の決裁者の好みが大きいとのこと(笑)
私が学生時代にアルバイトしていた会社は今では売上500億規模になっており順調に成長していますが、当時からイメージキャラクターとして某女優の方を起用していました。
ただ、一般的にはそこまで知名度が無い方だったので、なぜこの女優の方を起用したのかを社員の方経由で確認したところ、
社長が好きだから
とのこと(笑)
この回答がどこまで本当かは分からないですし、代理店側からも起用を検討する上で必要な情報(イメージやキャラクター、過去の出演作品等)をしっかり提示しているので、そういう情報を参考にしながら最終的に判断していることは間違いないことですが、とは言えこういうのって論理的に決められるものではないからこそ決裁者の意向が強いようですね。
面接ではさすがに好き・嫌いという個人的尺度で判断しないよう努めていますが、とは言えその人が成果を出せるか、周りと上手くやれるのかという絶対に面接では判断できないことを判断しようとしているので、どうしても感覚に依存してしまうのかなと思います。
面接は何度経験しても難しいものだと痛感している私ですが、今後は正社員であることの必要性が徐々に無くなる時代になると思っているので、面接という形式は徐々に無くなるかもしれません。